手紙を書く婦人と召使

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ヨハネス・フェルメール 手紙を書く婦人と召使

ヨハネス・フェルメール 手紙を書く婦人と召使

A Lady Writing a Letter with Her Maid
制作年 1670年頃
他に女中が女主人に手紙(おそらくは愛人からのもの)を渡す場面が描かれている作品があるのに対し、本作品では女性が手紙を書き、女中はその手紙が書き終わるのを待っているという構図である。
テーブルの前の床には印章と封蝋(手紙に封をするためのもの)が転がり、背後の壁の絵は『モーセの発見』をテーマにしたもので、『天文学者』の背景にも描かれている。
この絵は、アイルランドの実業家が所蔵していた時に2度盗難に遭い、1度目の盗難の後の修復で「封蝋」が描かれていたことが発見された。
1986年5月21日には同じ家からまたも盗まれ、犯人はアイルランドでも指折りの犯罪者で、この時はすぐには発見されなかったが、1993年9月1日、捜査当局はベルギーのアントウェルペンで無事に絵を回収、1988年にアイルランド国立絵画館に寄贈されている。

ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)

1632年〜1675年

フランドル派

ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)

1632年オランダ生まれのフランドル派ヨハネス・フェルメール。

彼の生涯作品は35点ほどであると言われており、極端に少ない。

彼ははじめ物語画家として出発したのち、風俗画家に転向。

彼の作品の特徴として挙げられるのが、「フェルメール・ブルー」といわれる青色絵の具を使っていること。

当時金と同じくらいの価格で取引されていたという鉱石ラピスラズリを原料とする貴重な絵の具を、数少ない生涯作品のうち、24点もの作品に使っていたという。

絶対王政時代の17世紀ヨーロッパ。オランダは王を戴かず、経済の力で大国になった。海洋貿易、軍事、科学技術で世界を牽引し、文化・芸術も大きく花開いた。

 

「他国では王侯貴族や教会の占有物だった絵画が、フェルメールの生きた十七世紀オランダでは庶民の家の壁にもふつうに飾られていました。

フランス印象派より二世紀も先に、庶民のための芸術が生まれていたのです」(あとがきより)

 

フェルメール、ハイデンの風景画からは市民の楽しげな暮らしが見て取れる。

レンブラント、ハルスの集団肖像画は自警団の誇りと豊かさを、

ロイスダールの風車画はオランダ人の開拓魂を、

バクハイゼンの帆船画は東インド会社の隆盛と経済繁栄を伝える。

ヤン・ブリューゲル二世はチューリップ・バブルに熱狂した意外な一面を描き、

ステーンが描く陽気な家族からは、人々の愉快な歌声まで聞こえる。

 

フェルメールが生きたのは、こんなにも熱気あふれる“奇跡の時代”だった。

人々は何に熱狂し、何と闘い、どれほど心豊かに生きたかーー15のテーマで立体的に浮かび上がる。

 

『怖い絵』著者・中野京子が贈る《名画×西洋史》新シリーズ誕生!

 

絵画40点フルカラー掲載。

 

2022年開催『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』で来日中の『窓辺で手紙を読む女』の修復前後の絵も収録(「手紙」の章)。

本書を読むと、美術展の楽しみも倍増です!