Girl with a Earring
制作年 1665〜1666年頃
少女の謎めいた雰囲気から「北方のモナリザ」とも呼ばれ人気の高い作品である。
この作品は、トレイシー・シュヴァリエが2000年に発表した小説『真珠の耳飾りの少女』およびそれを原作とした映画によって一段と有名になった。
小説ではフェルメール家の女中がモデルとされ、画家と女中の間に淡い恋物語が展開するが、実際のモデルについては謎である。
また他の作品と異なり、この作品には物語性や教訓性はなく、めずらしく暗い背景に少女の上半身だけが描写されている。
修復時の調査により、下塗りには場所によって黄土、赤、クリーム色などさまざまな色を使い分け、微妙な階調を出していることがわかった。
少女の衣服の襟の白色がイヤリングに反映しているところも的確に描写され、唇の両端に白の点を置いて唇の濡れている感じを表していることもわかった。
1632年〜1675年
フランドル派
ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)
1632年オランダ生まれのフランドル派ヨハネス・フェルメール。
彼の生涯作品は35点ほどであると言われており、極端に少ない。
彼ははじめ物語画家として出発したのち、風俗画家に転向。
彼の作品の特徴として挙げられるのが、「フェルメール・ブルー」といわれる青色絵の具を使っていること。
当時金と同じくらいの価格で取引されていたという鉱石ラピスラズリを原料とする貴重な絵の具を、数少ない生涯作品のうち、24点もの作品に使っていたという。
絶対王政時代の17世紀ヨーロッパ。オランダは王を戴かず、経済の力で大国になった。海洋貿易、軍事、科学技術で世界を牽引し、文化・芸術も大きく花開いた。
「他国では王侯貴族や教会の占有物だった絵画が、フェルメールの生きた十七世紀オランダでは庶民の家の壁にもふつうに飾られていました。
フランス印象派より二世紀も先に、庶民のための芸術が生まれていたのです」(あとがきより)
フェルメール、ハイデンの風景画からは市民の楽しげな暮らしが見て取れる。
レンブラント、ハルスの集団肖像画は自警団の誇りと豊かさを、
ロイスダールの風車画はオランダ人の開拓魂を、
バクハイゼンの帆船画は東インド会社の隆盛と経済繁栄を伝える。
ヤン・ブリューゲル二世はチューリップ・バブルに熱狂した意外な一面を描き、
ステーンが描く陽気な家族からは、人々の愉快な歌声まで聞こえる。
フェルメールが生きたのは、こんなにも熱気あふれる“奇跡の時代”だった。
人々は何に熱狂し、何と闘い、どれほど心豊かに生きたかーー15のテーマで立体的に浮かび上がる。
『怖い絵』著者・中野京子が贈る《名画×西洋史》新シリーズ誕生!
絵画40点フルカラー掲載。
2022年開催『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』で来日中の『窓辺で手紙を読む女』の修復前後の絵も収録(「手紙」の章)。
本書を読むと、美術展の楽しみも倍増です!