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朝日新聞
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ビルナケウ回想録の中では読みやすい一冊
(2007-01-22)
アウシュビッツ収容所の中でもビルナケウと呼ばれた女子収容所を生き残った女性の回想録。著者はゲットー解体に伴ってアウシュビッツ送りとなり、看護師として収容所病院にで働いていたために他の収容者よりも比較的よい待遇を受けることが出来、ソ連軍侵攻に伴う「死の行進」を経験して、終戦直前に逃亡に成功する。1943−1945年までの、まさにアウシュビッツが絶滅収容所として最大に活動していた時期の生き残りである。著者は非常に慈愛と常識にあふれたしっかりとした人柄で、邦文の訳がたいへんなめらかである。全体的にまとまった文章に仕上がっているので、アウシュビッツそのものの残虐な描写は隠すことが出来ないが、生き残りの証言としては、突き放したような思想性や哲学性は見られず常識的に仕上がっている。収容所解放後の日々の描写も詳しく、著者はソ連側で解放されたのであるが、解放後に地域を覆った空気がどういうものであったか、ソ連軍はどういうものであったかもかかれている。
他のビルナケウ回想には「アウシュビッツの少女」「アウシュビッツを越えて」「チェロを弾く少女」等があるが、いずれも「マーラの脱走」「ウニオン火薬工場の蜂起」等の共通体験が書かれており、現在からみるとあまりの凄惨さに現実離れした感も受ける絶滅収容所の日常をたしかに生き残った群がいるのだと、わたしたちに分からせてくれる。

