中央公論社
グループ:Book
ランキング:482526
価格:¥ 504
発売日:1970
只今品切れ中
このページのURLは
http://clubks.com/baby/asin/Books/B000J9A1HE/
カスタマーレビュー ![]()
青春期の心を抉った表題作
(2007-07-15)
作者の処女短編集。後の「色」シリーズとは異なり、作者の鋭敏な感覚をそのまま作中に出しており、切れ味鋭い出来となっている。
タイトル作「喪失」は私が庄司氏の作品を読むキッカケとなった思い出深い作品。主人公の青年はある美少女を対象に足に不自由のある別の青年と争う事になる。ライバルの青年も高慢な態度を見せるが、主人公が少女を的にウィリアム・テルばりの射矢の賭けを持ち出すに及んで、急に態度を軟化させ、主人公にミジメな許しを乞う事になる。主人公はこれによって優越感に浸るが、もはや恋の行方はどうでも良く、"優しさを喪失"してしまうのである。作品の緊密な構成、無駄のない会話、鋭い心理描写など作者の頭の良さをストレートに出したもので、十代半ばに読んだ私は圧倒されたものだ。他の二編のうち「蝶をちぎった男の話」も印象に残る作品で、恋愛対象の男女の年齢は前作より上に設定してある。無垢で美しい女性の残酷さと、その女性に取り憑かれた男の煉獄の苦しみを描いて怖い。
後の「色」シリーズは本作の反動で書かれたと思える程、一切の優しさを排し、恋愛における男女の心の闇を抉った快作。




