青土社
グループ:Book
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価格:¥ 1,995
発売日:2004-08
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私ならどんな手紙を送るだろうか
(2004-12-07)
スポーツ用品メーカーのCMで76年当時の映像が流れ、アテネ五輪
の会場にも姿を見せたコマネチ。今夏の自伝出版は実にタイムリーな
贈り物。
『白き舞』以来、ファン待望の著書です。
ここ何年かはテレビ各局が、ドキュメンタリー形式で彼女の亡命までの
経緯を伝え、『あの人は今』的な特番の常連ともなりました。
自由を得た今、この本でどう自身を振り返るのかは興味深いものでした。
常に客観的に物事を捉える聡明さ
氷のようだと評された振舞いの中に秘めた情熱
天賦の才能とそれに頼らぬ努力の積み重ねに裏打ちされたプライド
自由主義国で暮らすようになった今も、多くの人々が抱くイメージを
決して裏切ることなく、淡々と語られるその半生は、ファンでさえ知
り得ることのなかった出来事の連続でした。
特に78年当時、思春期の心と身体の変化からコーチの前で涙した
というエピソード。
引退後、国家体制の下で貧困にあえいだその暮らしぶり。
また亡命の際の心の動きは、決してマスコミには伝えることの出来な
い、実に生々しいものです。
常にハイエナのようなマスコミの標的にされ続けた人生。
その恐ろしさを誰よりも知り、また同時にその恩恵に浴する立場でも
あるコマネチが静かに語ることで、読む者の心を強く揺さぶります。
頂点を極めたアスリートの自伝という域を越えた、重みあるストー
リー。
『私なら、コマネチにどんな手紙を送るだろうか?』
読後、ふと考えましたが、熱心なファンであったはずなのに不思議と
何も浮かびませんでした。
今はただ彼女に幸せなひとりの女性であって欲しい。
そう思わせる一冊です。
白い妖精の知られざる苦闘の青春と亡命
(2004-09-04)
ナディア・コマネチに関して、日本人が持つイメージは、少女のころの白い妖精ぶりと、その後の不細工な肥満と、アメリカへの亡命のときの記者会見のときの厚化粧と、妻子ある男との不倫とかのスキャンダルぐらいではないか。やはり、大人の言うとおりに機械人形みたいに体操ばかりやっていると、大人になってから駄目なんだよね・・・子役が大人になってから駄目になるのと同じで・・・のような。
しかし、この本は、まっすぐでシンプルな言葉で書かれていて(また、その声の感じを訳文が良くつかんでいる)、ここで語られていることが真実なのだと、読者に確信させる。この女性の聡明さ、忍耐強さ、堅実さ、公平さが、良くわかる。これぐらいの資質がなければ、あれだけの偉業は達成できなかったろう。凡人の下司のかんぐりによる様々なスキャンダルと根も葉もない噂に対しても、冷静に彼女は説明する。事実を淡々と。
ルーマニアという日本人にはあまりなじみのない国の匂い、自然、仕組み、そしてチャウシェスク政権時代の圧制による息苦しさ、生活の困難さ、それでも隣人で助け合う国民たち、そのような情報も豊かに伝えて、面白い。
中でも、圧倒的にいいのは、「この国にいたら狂うしかない」と判断し、コマネチが亡命を決意し、決行し、何とかアメリカに亡命するまでの経緯だ。このあたりが、いたずらに劇的に書かれていないからこそ、かえってハラハラと迫真的に感じられる。ほんとうに、すごい!「勇気と捨て鉢は似ていないわけではない」といった彼女の感慨は、リアルだ。
この本の中に、アイン・ランドの小説を読んだという記述が出てくる。彼女は特にランドのファンではないようだが、ランドが作品で描いた共産主義や集団主義や全体主義国家の腐敗は、身をもって経験したから、ランドの小説に共感したろう。しかし、この白い妖精は、互いに助け合う集団のための自己犠牲的精神=チームワークの精神の肯定的側面を信じている。彼女にそう確信させたのは、ルーマニアとソ連の違いかな?この人は、努力も鍛錬も半端ではなかったが、運も自律心も強い勇敢な妖精だ。読後感、爽やか。




