筑摩書房
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価格:¥ 561
発売日:1992-12
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マーケティングの良書
(2004-01-03)
初めて読んだのは、もう10年以上前になるが、日本のマーケット状況、大衆心理、消費構造を分析した本では、これ以上に琴線に触れるものは、未だにない。当時は高校生だったが、企業に入社しマーケティングを担当しても、その印象に変化はない。時間の経過に耐える、というだけで良書は良書足ると思う。
そもそもの問いは、『ベストセラー』という一時期に大量に消費される文学作品という『現象』がなぜ起こるのか、ということです。そして結論は、作品そのものではなく失われていく共同体を疑似体験するための儀式への参加なのだ、ということ。社会学でいう80年代の島宇宙化による思考の細分化とそれへの反動を非常にうまく描写していると思います。この図式は、今でも全く色あせていないと思われます。
僕は、評論家中島梓と小説家栗本薫の小学生からの大ファンなので、多少色眼鏡にかかっている部分はあるかもしれない。しかし第三者の目で見ると、冗長で同義反復が多い作者の文章は、嫌いな人も多かろう。しかし、結論だけならば、社会科学は、数式や一文の定義で表現できる。重要なのは、その結論へ至る具体的個別的なものから抽象度を上げていく『思索の過程』であると思う。中島さんのウザイところでもあり、素晴らしいところはその過程が逐一読み取れること。また自身が一時スキャンダルでテレビを騒がせたし、また天才的な物語作家として世界一長い小説グインサーガを書き、ヤオイものジャンルの元祖であり創始者というように、日本のサブカルチャーのど真ん中の材料から思索がスタートしている点が興味深い。今でも時々読み返して、同じ思索過程を追体験するようにしています。ある意味僕にとって「社会というものの構造分析する視点の」教科書ですね。
この分析を作品論に展開したのがデヴュー作の『文学の輪郭』であり、小説家として実践への宣言書が『わが心のフラッシュマン』です。そちらも合わせて読んだ上で、『コミュニケーション不全症候群』を読むと、非常に刺激的な知的スリラーであること間違いなしです。もう一歩言えば、これらの分析の母体となったコリン・ウィルソンの『アウトサイダー』も合わせて読まれることをオススメします。
文学が消費される構造を描き出す好著
(2002-03-22)
数万部も売れない文学と、数百万部も売れる文学と、なぜその差が生まれてくるのでしょうか。それは、その本のコンテンツの良し悪しではなく、とにもかくにもミリオンセラーだ、という理由だけでその本を読む「知的階級」が存在するからです。
個々人の関心の対象が極限まで細分化されてしまい、人が自己の存在基盤を見出しにくくなった現在、それでも自分は共同体の一部であると自己認識するツール、つまりミリオンセラーが必要になる、という議論には説得力があります。
翻って考えると、高視聴率の連ドラ、サッカー日本代表、東京ディズニーランドなどなど、この欲望を満たすツールは多いです。そうした「流行の」ツールを消費することでしか自己を規定できないとすれば、これほど虚しいことはないのではないでしょうか。そんなことを考えさせられる一冊です。
栗本薫/中島梓の文体は、説明がくどくてあまり好きではないのですが、特にエッセイには妙な説得力があります。書かれてから20年近く経っていますが、日本の文壇も社会も未だにあまり変わっていない、というよりますますそういう傾向は強まっている、と思うので、お勧めできます。
優れた分析
(2002-01-12)
現代日本における小説本の買い手についての大衆心理分析の書である。この著者と同様に私も、「ベストセラー本=質が低い駄本」とは一義的に決め付けない。私は殆どの人と本についての話が噛み合わないし接点さえ掴めなかった。この本が私にその理由を教えてくれた。この本はあくまでも商品としての本の作り手と売り手と買い手についての関係とそれぞれの心理分析をしている。社会学や社会心理学や現代文明論やマーケッティングの良書でもある。「ベストセラー本の著者と編集者と出版社や全てのマスコミや広告代理店の人たちはこういうことを考えて本を作っていたのだ!」と考えさせられた。そうはいえども中には自覚無しで大当たりした人たちもいることだろう。大衆音楽ビジネスについてもこの分析を応用することが出来る。大衆社会、ここでは日本の中流たちが壮大なるナルシズム文化を形成しているということらしい。海外先進国でもこの構造は似たようなものだろう。買ってから9年経ったがずっと私の頭に残っている。栗本慎一郎氏も一昔前のニューアカデミズムブームについて似たような論考をされていた。私のような本の読み手・買い手は人口一億人の日本でも数千人から精々2,3万人いればいい方なのだと説得させられた。自分が本でビジネスする気ならばとても重宝する。




