大修館書店
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発売日:2005-07
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あくまでも「音声学」書
(2007-11-06)
英語音声学についての知識が、網羅的、かつ簡潔に
わかりやすく示されており、好感が持てる。
ただ、説明はIPAに頼っているところが多いため、
一般音声学の知識がなければついて行くのに苦しいかもしれない。
それと、これはあくまでもオーソドックスな「英語音声学」の本であって、
「英語発音」のための本ではない点に注意。「日本人のための」と
謳ってはいるが、日本語の音と比較しながら英語の音声を説明している程度であり、
日本人特有の英語の問題点や、その改善策、練習方法などにはあまり言及がない。
例えば、日本語のrの発音と英語のrの発音の違いが調音音声学的に
示されているが、では日本人が英語のrを発音するためには
どうすればいいのかという点には触れられていない。
この点「日本人のための」説明が充実していれば、更に有益だったと思う。
なお、日本語音声学の説明では、あまり一般的とは言えない立場を取っている
部分も多々ある(例えばシの子音を硬口蓋歯茎音としたり、特殊音素として
二重母音の後部要素/J/を立てるなど)。
あくまでも英語音声学の本であり、日本語については日本語音声学の専門書を
参照するのがよいだろう。
必要な事項がコンパクトにまとまっている
(2007-09-06)
日本人が正しい英語発音を身につけるという目標から逆算して、何をすれば良いかを根本的に考えて作られている。このため、英語の音声の説明の前に日本語の音韻体系を説明し、その前には一般音声学も説明されている。「英語ができれば良いだけなのに」と思ってはいけない。このやや大げさにも見える準備があればこそ、英語の発音の説明も分かりやすくなっている。
本書はアメリカ英語の発音(General American)を基本としているが、イギリス英語の発音(Received Pronunciation)についてはまとめて一章に解説されている。付属のCDは基本的に手本となる音を単語や文で録音したもので、これだけでインテンシブな練習ができる訳ではない(これは著者も認めており巻末に親切な教材の案内もある)。
個々の音についての説明はごく普通と考えてよいが、日本人にとり難しいところもきちんとおさえている。アクセントやイントネーションについては、著者がかなり工夫したことが見て取れ、分かりやすいものの、評者はその成否をにわかに論じる能力がないので、読者が判断してほしい。
辞書の発音記号がさまざまであることを勘案して、本書で用いている発音記号(基本的にIPA)との対照表のテンプレートを用意しているのも気が利いている。
総合的に見て、著者の研究の蓄積および発音を指導してきた経験(英語に限らず外国語の発音に関しては、これがない著者の本はまずでたらめと言って良い)がコンパクトにまとまっている。発音の練習は外国語学習において、終わることなくやっていく必要があるが、本書を読んでおけば、行く先々で迷った時の道しるべになる。
現時点での最高・最新のトレーニング用テキスト
(2005-11-19)
著者の意図するところではないかも知れませんが、書名の『日本人のための英語音声学レッスン』が示すように、音声学についての基礎的知識がないと一人で学ぶのは難しいかも知れません。通常、「レッスン」にはトレーナーやインストラクターが必要なように、この本もクラスで講義を受けるときのテキストとして使用されるのが一番ふさわしいように思われます。
本書は、学者によって異なるさまざまな学説や記述方法から、音声学を学ぶ上で重要なポイントのみ抽出され、さらに著者の視点で統一された上で、1冊のテキストとしてコンパクトにまとめられています。まったくの初心者よりも、さまざまなテキストや論文を読んだけれども、どうもすっきりしないという学部生や院生が読むと参考になるのではないかと思います。
現在、強勢やイントネーションについての新しい研究の成果を分かりやすく紹介しているテキストは本書以外にないと思われます。ただ、説明がやや簡潔すぎる箇所があるので、音声学になじみのない読者は混乱するかも知れません。(当然IPAやアメリカ英語の母音等についても矛盾なく解説されています。)独習者の場合は、本書を正しく理解できる基礎的な学力をつけてから読むことをお勧めします。松坂ヒロシ著『英語音声学入門』を別売のCDを使って練習しながら最後まで読み、さらに小泉保著『音声学入門』(こちらはテープを使用しなくても可)で一般音声学の概略とIPAについて理解すれば、本書をスムーズに読み進めることができると思います。基礎的知識のない個人が読む場合は、星を2つ引いて★★★くらいの評価が妥当かもしれません。しかし、正しく読むことができればこれほど強力なツールは他にはなかなか探せないと思います。
音声CDはいい。
(2005-11-01)
英語音声学の本は和書でもいくつかあります。(竹林滋氏、松阪ヒロシ氏の著書など)が、そのほとんどが音源が別売りのテープであり、別売りテープは数千円するものがほとんどなので、CD2枚が付属で付いているこの本は貴重な本であると言えるでしょう。CDにはほぼ全て男声、女声両方で録音がしてあります。また、値段も類書と比べてそれほど高くありません。
英語音声学の本の多くは大学の教科書として、教員の説明とともに使われるべく書かれているものがほとんどです。この本に関していうとある程度初心者にわかりやすく説明するため詳細をはしょっている部分が見受けられるのですが、やはり初心者には理解が難しい部分があるような気がします。
またこの本は基本的に日本語の音との比較で英語の音を記述しているので、英語の音の客観的な説明はほとんどありません。そういう部分を補充する教材が必要になると思います。
初心者には松坂ヒロシ先生の「英語音声学入門」をお勧めします。まずこの本を使って個々の音の作り方を学んだ後、この本と付属CDを使って勉強すればいいと思います。
音源に関してしいて言うならば著者の日本語の滑舌が決していいとは言えず、耳障りなことがあるくらいですね。(気にならないといえば気になりません)
音源は類書の中でトップクラスですが、内容はやはり類書に劣る部分もあるでしょう。
概念的なことが学べる
(2005-09-25)
音声学の基本的な概念が説明されており、よい入門書となると思う。あと日本語と英語の対比も、面白い。
音を区分するための概念的道具を理解するには良い。母音の種類分けも、実践型の発音本よりも細かい。
IPAの母音記号はうまく説明されている。口の中の部分をあらわす言葉は結構覚えにくいので、イラストがあると説明力を増したかもしれない。英語の場合は、単語の間にスペースがあるのでもう少しわかりやすいのだが、日本語の場合は漢字が並ぶので分かりにくい。このあたりは、学習者がまず専門用語を暗記するしかないのかもしれない。
前半が分かりにくかったのは、やはり口の中の部分をさす名称がややこしいということだろう。これは本のせいではないが、イラストなどの工夫がいったかもしれない。
改良できる点は、発音の実質的な説明が以外と少ない点。
一つだけ例をあげると、43ページにアにあたる二つの発音が説明してあるが、事実上、片方は口のあけ方が大きく長い、片方は口のあけ方が小さく短いというだけで終わっている。そのあとに3段落文ほど説明がつづくものの、発音自体の説明というよりは、背景的な知識。
音を聞いて学ばせるというスタイルの本もあるので、こういうスタイルの本があってもよいかとは思う。また、背景的な知識を学ぶというのもよいかもしれない。
やや矛盾した部分もある。(とはいえ、揚げ足取り的になっても、きりがないが。)
基本母音という考え方は、言語の母音を客観的に記述するために考案されたもので、実際は理論的存在であり、特定の言語が、その枠組みに一致するわけではない著者は言う(12ページ)。特定の言語にあてはまるわけではない枠組みでどのように客観的な記述が可能になるのか気になるところである。
「アメリカ英語では長さのみによる母音の区別は事実上ないに等しい。」と書いてあるすぐあとに、「短母音に分類されている母音もそれぞれで長さに違いがあり、殊にAEは長い」とある。長さによる区別があるのか、ないのか、混乱してしまった。
まとめると
音声学の概念を学ぶには良い本である。
個別の発音の説明が分量的に意外と少ない。(かわりに背景的説明が多い。)
ただし音で学ぶというアプローチをとるならば、問題はない。




