税務経理協会
グループ:Book
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発売日:2004-08
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アンチ時価会計の視点
(2007-10-13)
2004年8月に上梓された古い本なのですが、会計コンバージェンス(会計基準の世界標準化)が叫ばれる中、いまこそアンチ時価会計の立場を明確にしている著者の考え把握しておくことが、自分の頭の中を整理するために有用ではないかと思い、購入した次第です。
第2章のギャンブラーのためのアメリカ会計が非常によくまとまっております。最近導入された、四半期報告、包括利益、企業結合会計、プロフォーマ財務諸表、ストックオプションの制度を一つ一つとりあげて鋭く批判しております。
例えば、包括利益は、利益の実現の有無を無視して資産の評価差額のすべてを計上する考え方であるため、「企業の経営成績を判定することはできない。」ということになります。「実現するかどうかもわからない利益までも含んだ包括利益計算書を信用して投資したりすれば、絵に描いたような『黒字倒産』を経験するであろう。」という主張は非常に説得力があります。
第4章の亡国の減損会計でも鋭い主張があります。「事業はトータルな成果としての利益を追求するのであり、そのためには、・・・一部で赤字を覚悟の事業展開をすることがある。その赤字事業を捉えて損失を計上することになれば、どの企業も『いいとこ取り』しかできなくなる・・・」。まさにおっしゃる通りです。
また、本書を読んで非常に参考になったのは、アメリカや国際会計基準がある基準を成立させるには、その特殊事情や背景があり、それらの知らせざるエピソードが紹介されていたことです。
例えばアメリカのFAS115号は日本の金融商品会計のモデルと言われていますが、これは、多くのS&L(貯蓄信用組合)が破綻した事件を受けて、SECに作るようにいわれて作った基準であるといいます。表向きは一般の事業会社も含めて適用させるように設定されていますが、アメリカでは一般事業会社が有価証券に投資することはないため、「事実上適用されない」基準だと書かれています。
ここまでは知っている人も多い話なのかもしれませんが、債券について時価評価しないのは、「『満期までの間の金利変動による価格変動のリスクを認める必要がない』から原価のままでよいなどといった単純な理由からではない」ようです。「アメリカの生命保険会社が保有する債券は、総資産の70%を超えるという。株式運用はせいぜい5%である。株式が時価評価の対象になっても影響は小さいが、債券が時価評価されるならば、金利動向によって資産側は大きく変動する。・・・容易に債務超過に陥る」といった「時価評価できない事情がある」と言います。
その他、「負債評価のパラドックス」やデフレ下に時価会計を採る愚など、とことん時価会計を批判しています。
会計従事者にはおすすめの一冊です。ただし、繰り返しが多く、また批判に終始していることから、読むのにやや苦痛な面があるのは否めません。
デフレ下での重要な指摘です。ご一読を
(2005-09-30)
数年来時価会計論には不満を持っていました。特にデフレ下での時価会計論や減損会計論については、この国を滅ぼしたいのかとも思っていたほどです。(これらの論者はアメリカの真似や言うことを聞いていれば日本経済は良くなると思っているのですかね?)
本書は日本会計研究学会で活躍されている田中教授の論集で、「会計という視点から素顔のアメリカ、日本の真実を伝えることを目的」に書かれたものです。第一章「アメリカ会計の錬金術」から第5章「不思議の国の時価会計」まで、論点は多岐にわたっています。「V字回復の会計テクニック」(P.44)などは、世上名高いN自動車G氏のやり方を痛切に批判したものとも理解できます。もっとも世の中ではG氏を高く評価しているわけですから、本書は異端扱いになるかも知れませんね。また第2章「ギャンブラ−のためのアメリカ会計」などは読み物としても面白いと思います。総じて「素顔のアメリカ」「日本の真実」について重要な指摘をしていると思いました。(但し企業会計原則の歴史的な役割について否定的な著者の見解には若干反対です。戦後企業会計原則の作成・制度の定着などに貢献された故黒澤清教授や故山下勝治教授などの貢献を思い出してもらいたいものです。)
デフレ下での時価会計と日本経済への影響という重要な論点を含んでいますから、会計学を学んだことの無い人にも是非一読してもらいたいと思います。また著者は時価会計以外でも通説に対して様々な角度から議論を展開しております。是非他の著作も読まれると良いでしょう。




