文藝春秋
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カスタマーレビュー ![]()
愛する人に宛てた遺書の重さと悲しさ
(2007-11-07)
多くの人に慕われつつも、満鉄に所属していたことから日本に帰還することなくシベリアで亡くなった兵士、山本幡男氏のお話です。
このお話はラーゲリにおける日本人俘虜の生活、待遇についての詳細な記録です。その理不尽な扱いについての貴重な記憶になるのでしょう。
ですが、本書の白眉は、書名にあるとおり、山本氏が亡くなる前に家族に宛てた膨大な遺書でしょう。
収容所では日本人俘虜が何かを書き記すことが許されず、もし見つかれば重罪となってしまうために、遺書を託された人たちは、それを分割して暗記することにします。
結局遺族の許へは計7通の「遺書」が届けられます。ある遺書は書起されて持参され、ある遺書は郵送で。
多くの人たちから敬愛された山本氏です。その彼のために大変な労苦をおして届けられた遺書です。しかし、遺書を持ち帰った人たちは、必ずしも氏とは交流が深かった人たちばかりだったわけでもありません。何が彼等を突き動かしたのか。
引き受けた人の中には、この遺書を「新生日本の若者へのメッセージなのだ。山本は新しい世代の青年達と対座するような気持ちで書いたに違いない。」と感じて何度も書き写し、暗記をした人もいました。
きっとそれぞれが自分自身で解釈を加えながら、そしてそれを自身の希望に結び付けて山本氏の思いを持ち帰ったのだと思います。
私はとりわけ山本氏が妻と4人の子供たちに宛てたそれぞれの遺書を、涙なくしては読めませんでした。愛してやまない家族と二度と会えない人のあまりにも深い悲しみ、それが心に突き刺さりました。特にどうしても自分自身とダブらせてしまうのですよね。もし自分がそんなことになったら、悲しみのあまり胸が張り裂けてしまうでしょう。
「さよなら」。この一言にどれほどの悲しみが詰め込まれていたのでしょうか。
シベリア抑留の日々
(2006-11-04)
昭和の戦争の実相を知りたくて
いろいろ漁っているうちに出会った一冊である。
昭和20年8月15日、ポツダム宣言を受諾したのち、
満洲にいた日本人がソ連に連行された。
その数なんと60万人。
極寒の地で12年もの間強制労働をさせられた。
いわゆる「シベリア抑留」である。
本書は無名の抑留者である山本幡男氏を主人公にして
シベリアでの過酷な生活を淡々と綴っていく。
いつ日本に帰れるともわからない日々のなかで、
勉強会を開いたり、句会を開いたりしながら、
決して日本に帰る希望を捨てず、常に前向きに
日々を精一杯生きていこうとする主人公と仲間たち。
その姿に強く胸を打たれる。
東京裁判やA級戦犯の論議が戦後の「表」なら
これは戦後の「裏側」である。
ここにも確かに戦争の実相があった。
日本人なら一度は読んでおきたい。
名著である。
真実の物語に感動
(2005-10-01)
これが本当の話だとは・・・。苦境においやられても希望を捨てずに生きていく
男達の姿に、心からの尊敬を覚えます。歴史上名もない主人公ですが、
こんなに辛い状況下でみんなを励まし、数々の素晴らしい言葉を残した主人公のような人物こそ、偉人と言えると思います。素晴らしい物語です。
ただ、残念なのが文体が小説というよりレポートっぽくて、やや物足りなかったこと。
ノンフィクションの秀作
(2005-07-24)
ハバロフスクの強制収容所で昭和28年8月25日に息を引き取った山本幡夫氏と、彼の遺書を昭和32年になって何とか家族の元へ届けた抑留者たちの物語である。丹念な取材を多くの人に行った結果だと思うが、山本氏の作った俳句や細々としたエピソードなども数多く収録されている。そのため、山本幡夫と言う人物のイメージが明瞭になると同時に、収容所の生活も鮮明になってくる。これこそが、まさにノンフィクション作家の仕事と言うものだろう。事実を淡々と時間軸に添って描写するだけでも、大きな感動を呼べるのである。
辺見じゅんの傑作
(2004-01-13)
辺見じゅんがこんなにも素晴らしい作家だということをこの本を読んではじめて発見しました。
声高に戦争の罪などを問うわけでもなく、ただ真摯に生きる人間の姿を淡々と描き出しているにもかかわらず、読み進むにつれ、怒涛の感動が心に押し寄せてきます。想像を絶する苦しみの中でも、人間はこんなにも誇りを持てるのだ、と。
生きるのが苦しいと思ったことのある人、10代20代の若い人たちにこそ読んで欲しい一作です。




