新潮社
グループ:Book
ランキング:23020
価格:¥ 620
発売日:2008-01-29
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朱夏 (新潮文庫―警視庁強行犯係・樋口顕 (こ-42-2))
カスタマーレビュー ![]()
文句なし、久々に出会った快作
(2008-11-15)
東大以外は価値がない、と言い放ってしまう主人公に唖然としつつも、軸のぶれない生き方に魅了されます。読後感も爽やかで、日々社会で戦っているものを励ましてくれます。文章も短めで、リズム感がよく、読みやすい仕上がりになっています。警察小説と言うよりも心理小説、家族小説といったほうが良いかも知れません。名前買いのできる作家が少ない中、久々に筆力のある小説に出会うことが出来ました。今後の作品にも期待大です。吉川英治文学新人賞もしごく妥当だと思います。今年の一押しにやっと出会えた感じです。
巨大な警察機構をめぐる凄まじい人間模様―組織哲学への透徹した洞察!
(2008-10-07)
今野敏という作家の本を読んだのは初めてである。本書は吉川栄治文学新人賞を受賞した作品。タイトルもさることながら、たまたま彼の作品がドラマ化されていたことを思い出し、手にとってみた。切れのある短文は読みやすく、好印象だ。主人公の人生観や思考様式が繰り返し強調され、いささか冗長のような気もしたが、著者本人の熱いメッセージであると理解した。竜崎と伊丹という似て非なる性格の二人を中心に繰り広げられる連続事件の捜査。男たちの生々しい戦場とでもいうべき警察機構をめぐる組織哲学も興味深いものがあった。「警察小説の歴史を変えた」という表現にも特に異論はない。
とはいえ、扱われている事件内容それ自体は、ある意味ではありがちのケースではないか。犯人像とその絞り込み、またそれが次なる事件を引き起こすといったハラハラするようなダイナミックな展開では必ずしもないような印象も受けた。彼の本は初めてゆえ、まだ十分に読み込んでいないせいもあるだろう。とはいえ、主人公の一人である竜崎という警察キャリア官僚の、あくまでも合理的・原則的に生き抜こうとする生き様にはなぜか安堵感めいたものを感じてしまった。人は彼のことを「変人」と呼称する。国家官僚や警察機構の失態が日常茶飯事になる昨今だが、そうした状況とはいわば無関係に自らの思考を貫徹させようとする竜崎の存在は、私には一服の清涼剤のように映った。現実には彼のように生きることは難しいかもしれない。でも「信念」は曲げない。終盤における、小学生の同級生である伊丹との会話も見応えがあった。竜崎の妻が的確に見抜いていたように、二人はなかなかのコンビであった。なお読後感は爽快、数時間で読み終えた。時間ができたら次回作も読んでみたい。
こんな人が近くにいたら疲れるけど・・・。
(2008-09-27)
解説の北上次郎氏の「正論の人(主人公)を、警察組織の中に置いたらどうなるか、を描いたのが本書なのである。」という文章が、この小説の特色を見事に言い当てている。
主人公竜崎伸也のキャラクターが存在していなければ、まったく面白みのない小説だったに違いない。作者のセンテンスの短い事務的で乾いた文章も竜崎のキャラクターを引き立てるのに一役買っている。
本当にこんな人物がキャリア官僚としてやっていけるのか、という疑問は抜きにして、小説として楽しむことができた一冊だった。
隠蔽捜査2から読み直し
(2008-09-13)
山本周五郎賞、ミステリーグランプリ2008のW賞の果断―隠蔽捜査2から作者の作品をスタートし、原点を読み返しました。
期待を裏切らない展開の速さと登場人物の繊細な表現は、できのいいTVドラマを見ているようです。主人公、竜崎伸也は、今流行の警察官僚で、枠からはみ出そうな官僚主義の苦悩を描いております。
ストーリーは、官僚と家庭、幼馴染とあるトラウマ、そして出世と自分への嘘の間で、主人公は、揺れ動きます。最後に読み終わって、将来の選択が、すがすがしい気持ちにさせてくれました。
題名に偽りあり、だけどね
(2008-08-12)
面白かった。
ただし、題名から受ける印象とは裏腹に、推理もの、いわゆる警察モノと思ったら大間違い。
基本的に犯罪捜査はほぼありません。犯人推理もなければ、逮捕劇もほぼなし。
だから、この「隠密捜査」という題名の印象だけで手に取ると、えらく期待とは違うものになる。
一方で、面白いんですわ。
抵抗感もありますけどね。
なにで、二言目には東大以外は人間ではない、というような発言が出るし、態度にも出るんだから。
エリート官僚であることを、遠慮会釈なく前面に出す警察官僚。
にもかかわらず、ストーリーにぐいぐい引き込まれながら、そうかぁ、こんな官僚が必要なんだってね。思うようになる。
そして、その一点の曇りもない、官僚中の官僚が、人間臭く、家族を正面から見つめることになる。
何というか、面白い。
捜査をする警官、官僚。たとえエリートだろうと、国家権力の担い手だろうと、とどのつまり一個の人間であるという、当たり前のことが実に新鮮に映る。
なかなかのストーリーテイラーが、新しい境地を開いたような気がします。
うれしいことにシリーズ物となるとのこと。次作が楽しみ楽しみ。




