新潮社
グループ:Book
ランキング:53066
価格:¥ 460
発売日:2002-02
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信頼できる「震災との距離感」
(2008-11-16)
「地震のあとで」書かれたこれらの短編では、地震そのものは登場人物から遠いところで起こったものとして描かれる。神戸という地名に何か心の傷を持っている登場人物達が、地震があっても無くても関係ないように他の土地で生き難そうに生きている。震災はテレビや新聞、旅行ガイド等を通じて語られるだけだ。そして、いつも通りの淡々とした村上ワールドのストーリーが語られる。地震を直接経験しなかった者はこのようにしか地震を語れないし、このように生きていくしかない。
ここ一番の盛り上がりで登場人物がやたら泣く作品ばかり書くので、実は村上春樹は余り好きな作家ではないのだが、震災に対して神戸出身の彼が示してみたこの「距離感」は信頼できると思った。
阪神淡路大地震の闇と心の闇が通じ合う孤独を抱えた人々の魂の再生の物語
(2008-11-02)
この短編小説集は、阪神淡路大地震の闇と少なからず孤独な心が通ずる主人公達の魂の再生の物語だと私は理解しました。最後の「蜂蜜パイ」の淳平は西宮市夙川出身で早稲田の文学部を卒業した短編専門の小説家、つまりそれはもう一人の有り得たかもしれない村上さんの姿でした。本書は読者の人生経験に即して深いメッセージを伝えることが出来る優れた短編小説だと思います。
以下に6つの短編から印象に残る言葉を抜粋します
1.UFOが釧路に降りる
問題は、あなたが私に何も与えてくれないことです、と妻は書いていた
2.アイロンのある風景
私はこの人と一緒に生きることはできないだろう。この人の心の中に入って行くことはできそうにないから。でも一緒に死ぬることならできるかもしれない
3.神の子どもたちはみな踊る
潮の満干や、野原を舞う風や、星の運行や、そういうものは決して自分と無縁のところで行われているわけではない
4.タイランド
生きることと死ぬることとは有る意味では等価なのです
5.かえるくん、東京を救う
ヘミングウェイが看破したように、ぼくらの人生は勝ち方によってではなく、その破れ去り方によって最終的な価値を定められるのです
6.蜂蜜パイ
何かをわかっているということと、それを目に見えるかたちに変えていけるということは、また別の話なのよね
これまでと違う小説を書こう、と淳平は思う。愛する人々をしっかりと抱きしめることを、誰かが夢見て待ちわびているような、そんな小説を
死とむかいあう
(2008-06-18)
100年の星霜に耐える大傑作。
死、なるものと真摯にむかいあい、死についてのその時点での氏の回答が述べられているように思えました。それは恐怖でも、畏れでも、宗教でも、慰めでもない、得たいの知れないものですが、生に対する慈しみと共感を感じました。すこしだけ死ぬのが恐くなくなりました。
“やみくろ”と戦うかえるくん
(2008-06-11)
この短編集は「 アンダーグラウンド」と対になっている。特にアンダー…のあとがきを読むと、この本で村上さんの言いたいことがよくわかる。今を生きている私達の足元に密かに居る“やみくろ”と戦うには同じくらい奇妙でよくわからないかえるくんという存在が必要なのだ。いや、それだけでは足りない。現実を生きるためには、平凡で誰からも評価されなかったとしても、まっとうに自分のすべきことをする片桐のような生き方が不可欠なのだ。人災にせよあるいは災害が起ころうと、そこから再び立ち上がるためには…。私にはそう作者が言っているように思えた。
神戸で震災に合われた方たち、そしてこの本の主人公達のように、直接遭わなかったとしても震災によって同じくらい苦しみや悲しみを感じている人たちの心がいつか癒やされるよう祈っている。
気分転換としても読める。
(2008-06-08)
阪神・淡路大震災をきっかけに、これまでの生活が少し「変わる」というか、「ずれる」という話。どれも奇妙で空想的。でも、どことなく現実感もある。このあたりが絶妙なところ。
内容は決して暗くないから、気分転換としても十分読める。




