新潮社
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発売日:1997-09
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現代日本文学の至宝
(2008-08-09)
期待感のない小説だ。ノーベル賞をとっても驚きはしないからだ。また読みおえた人を不幸にする小説だ。これよりよいものにめぐりあうことは今後そうないと思えるからだ。それ以外けなしようがないほどの大傑作。これ一冊で村上春樹の偉大さが十分わかる。
奇妙な鳥の声に気づくと間もなく愛猫が姿を消す。主人公岡田トオルの平凡な日常は徐々に変貌し、ついに妻クミコまで謎の失踪をとげる。何かが狂ってしまったなら、もとに戻すしかない。ねじまき鳥の声が止まると、岡田トオルの静かな戦いが始まった。行く手を阻むは綿谷ノボルほかに象徴される悪。時空をこえ世界を支配する強大な敵だ。普通人、岡田トオルは、はたして勝てるか。だが魂の彷徨を続けるなか、彼は様々な人々にめぐりあい、学び、力をつけていく。登場人物、エピソードはそれぞれが深い洞察に満ちたメタファーだ。複雑なこの世のすべてが記されているといっていい。さまざまに読みとけるだろうし、それ自体また楽しい。この本の魅力を語るだけで分厚い本が書けるだろうし、事実、出版されている。
一見シュールで難解だが、愛するものを奪還すべく悪と戦うシンプルさが核。古典的で普遍的なテーマを追求した清々しい物語だ。多くの読者をひきつけてやまないゆえんだろう。意味不明だがとにかくこの話が好きという人が多いのは、頭ではなく魂で読む優れた読者をそれだけとりこにしているあかしだ。
物語同様、簡潔な文章は、澄明で流麗。だから読みやすい。これからもより多くの人に愛されることを願う。
物語は続く
(2008-02-24)
この話、全然終らない。
でも実はこの作品、94年に第2巻まで発売され、2巻のエンドロールには「続」ではなく、「完」が記されていた。つまり、2巻完結の長編小説として世に送り出されたわけだ。
ところが翌年の夏に、予期せぬ形で第3部が刊行された。
「予期せぬ形で」とは言っても、第2部を読了した今思うことは「えっ?これで終わり?謎だらけなんですけどー」って感じだし、続編が刊行されてることは何の違和感もない。
この謎だらけの物語がどう収束するのか、僕は期待に胸を膨らませ、第3部に移る。
最後に第2部で印象に残った文章を記して終ろう。
「加納クレタが僕に向かって微笑みかけたのはそれが初めてだった。彼女が笑うと、歴史が少しだけ正しい方向に向けて進み始めたような気がした。」
再読を終えて。
(2008-02-09)
笠原メイ、加納クレタ。この二人の女性との絶妙な距離感での関係を中心に、一部では何がどうなっているのか解らなかった主人公が、自分のすべきことを見つけ出すまでの第二部です。
笠原メイの「あの女の人を抱いたから、もう私には用がなくなったってことなの?」というキビシイ言葉が妙に心に刺さりました。
夏の暑さと何ともいえない倦怠感を感じることのできる一冊です。
不気味な説得力
(2008-01-24)
ここ一ヶ月間、発表年順に村上春樹の作品をほぼ全て読んできたが、これが最高傑作だと思う。これほど面白い小説も珍しい。面白さという点で、東野圭吾の「白夜行」と双璧だ。また、なにげなく書かれているようだが、方法的にも考え抜かれた作品だ。ボルヘスなどラテン・アメリカ文学、ヌーヴォー・ロマンなどで試行されてきた実験的手法が使いこなされているように思える。
中巻はますます荒唐無稽だが、不思議な説得力がある。登場人物達が体験するようなシンクロニシティーや現実のような夢を(勿論、遥かに淡いものだが)私自身何度か経験しているからだ。その度に、宇宙は不可知のカルマと意味に満ち溢れたものであり、心と物、自己と他者はくっきりとは分離できず、別次元では相互に融合しているような感覚に陥るのだ。
そうした神秘感覚を煮詰めたような作品でもある。
クレタという女?が最も謎めいている。クミコの多重人格的無意識が創ったドッペルゲンガーのようにも見えるし、マルタの実在する霊媒の妹、ねじ巻き鳥の化身、宮脇の次女の幽霊のようでもある。
夢と現実とが交差した世界の表現に圧巻
(2007-09-28)
村上作品の中で初めて、主人公が怒り、暴力をふるう場面のある作品でもある。
まるで霧の中に迷い込んだかのような、夢と現実とが交差した世界の中で主人公(岡田)が困惑する。また自らが井戸の中に入り、クミコの失踪の原因について深い瞑想をし探求しようとする。井戸の中での体験が非常にリアルだ。




