講談社
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カスタマーレビュー ![]()
繰り返す事で癒されていくもの
(2008-06-15)
この本のテーマはノルウェイの森、ダンス・ダンス・ダンスに共通のものがある。成熟しきれない主人公は自分でそれに気付いているが、どうしたらいいのかはわからない。しかし最終的には自分の責任で自分の世界を創ることに希望を見い出していく。人生が物語のようなものと考えると、この繰り返されるテーマは作家自身が自分を癒すために書いたものなのだと解釈できる。人間は同じ話を何度もすることによって悩みや苦しみから開放されていくものだからだ。しかし、村上作品の良いところは、そうであっても決して「自分には同情しない」ことである。このクールに、しかし誠実に自分を見つめた結果、それは現代の我々と共通のもの、あるいは人間の普遍性を教えてくれるのだ。だから同じテーマを読んでも私はそこに常に新しい発見をする。村上作品が癒しになっているのはそういう理由なのだろう。
中年男のありがちな妄想を見事に具現化
(2008-03-26)
男というものは中年になっても、若い頃につきあった女性の事がいつまでも忘れられず、
今頃は不幸な人生を送ってるんじゃないかなどと勝手にクヨクヨ考えている生き物である。
本書はそんな中年男の妄想を実に見事に具現化していると思う。
普通の作家がこういう小説を書いたら、おそらく陳腐なメロドラマになってしまうのだろうが、村上氏お得意の解釈に悩むキーワードやフレーズが巧みに仕掛けられ、秀逸な芸術作品として仕上げられている。
途中で映画「カサブランカ」みたいで、ちょっと陳腐かなーと思っていたら、最後の方でピアニストが「カサブランカみてえだよ」といって、それ以来主人公の顔を見ると時々冗談で「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」を弾くところなどは結構笑えた。
本気の浮気
(2008-02-29)
相思相愛の初恋が
紆余曲折を経て
ぎりぎりの妥協点で
実を結ぶお話です。
恋愛というのは
さわやかであり
もどかしくもあり
分別があり
いやったらしくもあり
情熱的でもあり
そういうのを総称して恋愛と呼ぶと思いますが
そんな感情が極限にまで描写されています。
浮気と呼ばれるものの手本みたいな感じで
やるんならここまで
パーフェクトにやらないと
誰も許してはくれないでしょうね。
気持ちも行動も含め。
文学作品、創作として読むのが良いです。
(2008-02-16)
この作品の主題は「はじめ(主人公)の身勝手さの在り方」だと思います。
主人公と似た経験がある人は感情移入できると思います。
しかし、あんまり感情移入しないで、距離を保って読むほうがいいかな?と思います。
やっぱり、結婚するなら他の女性を好きになることをあきらめるべきです。
それができなくて、歳を重ねても恋をしていたいなら、ずっと独身であるべきです。
この小説は、結婚はその二者択一を迫られているものだという概念が無く、
一般的な倫理観を破壊しかねません。
だから、感情移入して読み終わって、気持ちよくなっても、
次の日には「小説でフィクションだな・・・」とふりかえったほうがいい・・・
自分の周りに不幸な人を増やさないために。
A Broken Dream
(2007-12-04)
幾分不協和音的で、不思議な統一感を持ったこの小説の主題は、「夢を追いたい男、夢は嫌いな女」といったところだ。日本で屈指のストーリーテラーで、プロットの巧みさでは英米小説の優れた作家の域にある著者の隠れた傑作である。男は、少年時代の夢を大人になっても持ち続けている。女は、少女時代に見た同じ夢を現実に昇華しなければ、その夢は価値が無いと考えている。純粋な恋愛の葉っぱの裏側に浮き出ている葉脈を読み取らなければ、この小説を読みきったことにはならないだろう。エピローグは、ドラマチックな結末を期待する読者に肩透かしを喰らわせるかもしれないが、当然の帰結といってもよい幕引きだ。セックスと夢と死は連鎖しているが、男にとっては、sex-DREAM-deathだが、女にとってはSEX-(dream)-DEATHなのだ。恋愛を生きることに関して、女の方がずっと厳しい。女は、現実から逃れて夢を見続けるといった曖昧な糸の切れた凧みたいな感覚が大嫌いなのだ。一方、男の長く続く夢は、いつか壊れてしまうことを知りながら、眼が覚めるまで見続けたいと思うイマジネーションの産物。女のリアリズムに男のナイーヴな夢が敗北を喫するThe Same Old Story…。男が夢の破片を掃き掃除しなければならない惨めなステージだ。ニール・ヤングの“僕は夢見る男。あなたはただの夢だから、他の女に代わっても同じこと”という強がりはこの局面では通用しないのである。




