講談社
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カスタマーレビュー ![]()
天文図と古代政治
(2005-10-15)
近年のキトラ古墳の保存でも伝えられるように壁画保存は方法としても未成熟であり難儀を極めているようだ。未知の保存技術に挑む文化財関係者を無碍に悪く言うことはしたくないが、何とかならないものかとやきもきさせられる。
本書で扱われる高松塚古墳壁画は30年も前に発見され、キトラに比べると調査は格段に進んでいる。本書は1982年に毎日新聞社より刊行されたほぼ同名の書の文庫化であるが、『書紀』に関する暦の記述が第一章として増補されており充実している。高松塚古墳を知る学術的一般書としては最良のものだろう。と言っても古代史の謎がこれだけで解明される訳ではない。古代史の謎は深まるが故に楽しい。
現状では周知のように宮内庁の指定する陵墓を学術的に解明することはできない。近い将来にこの状態が改善されることを望むが、その際、被葬者のDNA鑑定は考古学上の知識を飛躍的に正確なものにするのではないか。また、高松塚、キトラのように陵墓として指定されていない被葬者のDNA鑑定がまだ実施されていないのは何か他に理由があるのだろうか?
一般の人はよく、朱雀、玄武、白虎、青龍の四神に目を奪われ本書でもその詳細な史学上の解説が加えられているが、実は天文図の方が殊更に重要ではないかという気にさせられた。天の下治す「天皇」が太陽ではなく、夜の世界にこの宇宙からの最も微弱な光線として人間のみが認識できる星宿を表現していたこと、しかし、人は宇宙の果ての恒星ほどの不動性はないことの葛藤が「天皇」を作ったのではないか。「天皇」の権力が強大であり絶対であるが故に北極星、星宿を描いたのではない、遥か叶わぬ無数の(実際には有限だが)星々の世界への強い憧憬と信仰こそが逆に一点に北極星に集中し「天皇」を生み出したのではないか。




