岩波書店
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中沢氏の怒り
(2004-08-14)
はだしのゲンの作者である中沢氏が被爆とその後の体験を語った本である。
はだしのゲンの物語の多くは、自身の体験をほぼ忠実に再現した物で
あることが解る。中沢氏は淡々と体験を語るが、原爆がいかに非人道
的な兵器であるかを強く感じることが出来る。
この本を読んで一番感じるのは中沢氏の怒りである。それは原爆だけ
に向けられた物ではない。半分は日本人に向けられている。被爆後身
を寄せた半農半漁の街では、住民は中沢氏らを助けたりはしなかった。
それどころか徹底的にいじめ抜いたである。中沢氏は「日本人の正体
をあそこで見た」と語る。
被爆後の広島では大量の孤児がいたが、行政も含め誰も彼らを助けな
かった。その大半は餓死し、生き残った者もヤクザの鉄砲玉として使
われ、虫けらの如く殺された。
中沢氏はイタリアと日本を比較する。イタリアでは市民が独裁者の死
体を引きずり回したが、日本人は天皇に土下座した。戦犯とされた者
達が、いつの間にか政財界の中枢に戻っていた。被爆者をいじめる一
方で、日本人は戦争責任者達を許したのだ。
中沢氏は、日本人が原爆の実態を本当に知っているかは疑問だと語っ
たが、その危惧は現実の物となる。この本は20年前に出版された物
だが、現在で閣僚が核武装論を語るようにまでなってしまった。
彼らこそ、この本を読んで、中沢氏の怒りを理解してほしい。




